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【スプリンターズS】フリッカージャブ“天高く肥ゆる馬”超一流の短距離資質

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<スプリンターズS>フリッカージャブ
 ◇鈴木康弘氏「達眼」馬体診断

 鈴木康弘元調教師(82)がG1有力候補の馬体ベスト5をセレクトする「達眼」。秋のG1開幕戦「第60回スプリンターズS」(27日、中山)では重賞2連勝中のフリッカージャブスターアニスパンジャタワールガルサウンドモリアーナをピックアップした。中でも達眼が捉えたのは、G1初挑戦となるフリッカージャブのたくましく肥えた馬体とギラついた目だ。

 天高く馬肥ゆる秋。台風一過の関東地方は空が澄んで高く見え、馬も肥えてたくましく育つ実りの季節を迎えました。時候のあいさつとしても使われるこのことわざの由来は中国の史書。前漢(古代中国)の将軍が敵の来襲を警戒した言葉だったそうです。「敵の匈奴(きょうど=モンゴル高原の遊牧騎馬民族)が秋になると肥えてたくましくなった馬に乗って攻めて来るぞ」と。前漢の将軍が恐れたのはフリッカージャブのようなよく肥えた馬だったのではないか。

 はち切れそうな筋肉の張り、ボリューム満点の腹周り、旺盛な食欲をうかがわせる大きなアゴ。食欲の秋を迎えてますます食べるのでしょう。前漢の将軍のようにライバル陣営も強く警戒すべき馬体です。

 ボクシング用語から命名された黒鹿毛馬。その体形は典型的なスプリンター。それも超一流の短距離資質を備えています。エンジン(トモ)の中心に当たる臀部(でんぶ)からエンジンパワーを推進力に転換する飛節まで非常に力強いつくり。ダッシュを利かせられる太くて短い首は筋肉でせり上がっています。後ろまで伸びた長くて大きなキ甲と、前にも張り出した腰。背中はこの発達した2つの部位に挟まれて短い。93、94年スプリンターズSを連覇したサクラバクシンオー(母の父)の血を体現しています。膝が少しかぶり気味ですが、問題ないでしょう。

 顔つきも実に精悍(せいかん)。ギラギラした目は獲物を狙う肉食動物、あるいは、リングに上がった一流ボクサーのようです。目に闘志を宿しながら、ハミは強からず弱からず適度に取っています。短距離決戦ならもっと気持ちを前面に出してほしいと思うぐらい落ち着き払った立ち姿。燃えるような闘争心を内に秘めて穏やかに立っています。心身一如といいますが、馬体と共に気性も凄い。

 夏の小倉(北九州記念1着)と残暑厳しい阪神(セントウルS1着)を使われ、中2週で大一番に向かいます。タイトなスケジュールには違いありませんが、そのダメージはどこにも見当たらない。疲れは腹周りと立ち姿に表れるものです。疲労がたまれば腹は多少なりとも細くなり、イライラした姿を見せるもの。ところが、この馬はよく肥えた腹周りと穏やかなたたずまいを見せています。

 フリッカージャブとはボクシング用語で、相手のテンポを崩したい時に放つ変則的なパンチだとか。だが、そんな変化技を使わずともストレートの一撃でG1の常連たちをKOできると思わせる馬体です。天高く馬肥ゆる秋のG1開幕戦。その主役にふさわしいスプリンターです。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の82歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。
(C)スポーツニッポン