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【キングジョージ】日本調教馬初Vへ 宮本博師、ヴェルテンベルクで「ひと泡吹かす」

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英国ニューマーケットで調整するヴェルテンベルク(宮本師提供)
 欧州夏競馬のビッグレース「キングジョージ6世&クイーンエリザベスS」が25日、英アスコット競馬場で開催される。日本調教馬初勝利を目指して、今年は2頭が遠征。ヴェルテンベルクを管理する宮本博師(63)に海外への思い、意気込みを聞いた。(取材・構成 田井 秀一)

 宮本師にとっては人生2度目の訪英。大学時代、英国との馬術競技対抗戦に日本の学生選抜として参加した。「ちょうど天皇陛下がオックスフォード大学に留学しておられて、応援にいらしていた。一緒に食事する機会に恵まれて、質問されたのも覚えています。“障害馬術と馬場馬術どちらがお好きですか?”“馬場馬術です”って」。鮮明に情景が浮かぶ思い出の地に、再び日本代表として赴く。

 世界最高峰の競走の一つキングジョージ。日本馬は過去6頭が遠征し、06年ハーツクライの3着が最高。「可愛がっていただいていた橋口(弘次郎)先生がハーツクライで挑まれたレース。挑戦が決まった時はうれしかったし、これだけ大きなレースに出られるのは光栄」と襟を正す。管理馬の海外遠征はクリンチャーで挑んだ18年凱旋門賞(17着)以来。「どちらも格式が高いレース。できればG1を勝った調教師として行きたい気持ちもあるけど…。まんざら人より運がないわけではないのかな」と巡ってきたチャンスを受け止める。

 海外には縁がある。馬術に没頭した大学時代には日韓対抗戦にも出場。調教助手になってからはキョウトシチーでドバイワールドCに挑戦(98年=6着)した。今や世界中の競馬シーンを席巻する日本勢だが、当時は遠征のノウハウが確立される前。「第1回がライブリマウント、第2回がホクトベガで、その次。ライブリマウントの関係者に話を聞いたりして。検疫や輸送、馬のケアなどについてリポートを書いて競馬会(JRA)に提出した」と次代への橋渡しの役割も担った。「そのリポートのおかげで調教師になれたのかも」と冗談めかして笑うが、大航海時代の礎を築いた一人であることは間違いない。

 ヴェルテンベルクは美浦トレセンでの出国検疫でマスカレードボールと合流。チームジャパンを結成した。「もう仲良しみたい。ウオーキングとかもびっしり一緒に。手塚厩舎の皆さんも良くしてくれている」。ファンの注目はそのマスカレードボールと、ジャパンC以来の再戦となる地元のカランダガンに集中するが、脇役に甘んじるつもりはない。「ひと泡吹かしたい。そう言ったら、吉田照哉オーナーも喜んでくれた」と虎視眈々(たんたん)と勝機をうかがう。

 「勝ったと思った」と今でも悔しさをにじませる前走の天皇賞・春でクロワデュノールを鼻差まで追い詰めたスタミナに、キングジョージ攻略の適性を見込んでいる。「2390メートルというけれど、アスコットはアップダウンが激しくて、日本における3000メートルに匹敵するようなコースだと思う」。地元の名手マーフィーを鞍上に迎え、人事を尽くして天命を待つのみ。「いいレースをしてほしい。組み立てはジョッキーが考えるだろうから、とにかく、あの馬らしいレースをしてほしい」と祈る。

 海外経験豊富な指揮官だが、緊張感は「ある」と隠さない。「でも、いつも外国に行く時は平常心は忘れないでおこうと思うようにしている。馬や騎手、厩務員が平常心でいられるような言動をしないと」。出国直前、宮本厩舎には管理馬の鼻筋を優しくなでる、いつもの師の姿があった。開業23年目の夏、世界を驚かせる大志を胸に秘めている。

 《異なる管理馬出走は4人目》欧州最高峰のG1であるキングジョージ、凱旋門賞にそれぞれ異なる管理馬を出走させるのは、日本人調教師では矢作師(キングジョージ=12年ディープブリランテ8着、凱旋門賞=22年ステイフーリッシュ14着、24年シンエンペラー12着)、友道師(キングジョージ=19年シュヴァルグラン8着、凱旋門賞=16年マカヒキ14着、22年ドウデュース19着)に続き、今回マスカレードボールを送り出す手塚久師(凱旋門賞=19年フィエールマン12着)を合わせて4人目。矢作師、友道師、宮本師はドバイワールドC挑戦の経験があるのも共通項。宮本師は「凄いホースマンの仲間入りやん(笑い)。友道さんには服装や現地の気候についてアドバイスをもらった」と笑みを浮かべた。

 ◇宮本 博(みやもと・ひろし)1963年(昭38)3月27日生まれ、滋賀県出身の63歳。厩務員の家に生まれ、伯父・悳(いさお)氏はタニノハローモアで68年ダービーを制した元騎手、元調教師。京産大時代に馬場馬術で関西学生No・1になり、85年に栗東・中尾謙太郎厩舎へ。持ち乗りの調教助手としてキョウトシチー、ナリタキングオーに携わる。04年に調教師として開業。08年小倉2歳S(デグラーティア)で重賞初制覇。JRA通算5615戦418勝、うち重賞9勝。
(C)スポーツニッポン