ニュース詳細

ニュース一覧

次世代に受け継がれる田村康仁師のホースマン魂

  • facebook
  • twitter
  • hatena blog
  • line
6月29日に亡くなった田村康仁調教師が管理したディーズゴールド(撮影・平松 さとし)
 【競馬人生劇場・平松さとし】4日、福島競馬場で行われた横手特別を制したのは、4歳牡馬ディーズゴールド(中舘)だった。

 もともと同馬を管理していたのは、田村康仁調教師。既報の通り、同師は6月29日、帰らぬ人となった。そして、その訃報後、元管理馬として初めて出走したのがディーズゴールド。見事な勝利は、亡き恩師へささげる何よりの花道となった。

 「このディーズゴールドは、入厩した時から最後まで、田村先生と時間をかけて、いろいろな相談をしながらやってきた馬でした」

 そう語るのは、田村師の右腕として厩舎を支え続けた高木大輔調教助手だ。

 「途中で担当を女性の上野瑠衣さんに替えることを提言させてもらいました。一生懸命やる子ですし、彼女のこれからのキャリアを考えても、お互いにとって良いと思って提案したところ、先生もすぐに受け入れてくださいました」

 その後、上野助手が前任者のもとへ毎日のように足を運び、質問するなどコツコツと努力を重ねる姿を見て、田村師も満足そうな表情を浮かべていたという。高木助手は続ける。

 「田村先生は、いつも私たちの意見に耳を傾けてくださいました。メジャーエンブレムやアスクビクターモアでG1を勝った時も同じで、“皆のおかげで勝てたよ”と話されていました」

 父である田村駿仁元調教師が昨年、92歳で亡くなられた際には、「田村の家系はみんな長生きなんだよ」と話していたという。それだけに、そのわずか1年後、自らも63歳という若さで旅立つことになるとは、誰も想像していなかった。

 高木助手は静かに言葉を結ぶ。

 「今回のディーズゴールドの勝利も、きっと空の上から見て、“よくやったな”と褒めてくれていると信じています」

 田村康仁調教師の姿は、もうトレセンにはない。しかし、仲間を信じ、若いスタッフを育て、皆で勝利を分かち合おうとしたホースマンとしての精神は、高木助手や上野助手をはじめ、教えを受けた人々の胸に受け継がれ、これからも競馬場のどこかで生き続けていくことだろう。(フリーライター)
(C)スポーツニッポン