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【追憶の高松宮記念】02年ショウナンカンプ デビュー戦完敗の馬が頂点へ 常識を覆した電撃新王者

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02年高松宮記念を制したショウナンカンプ
 「栴檀(せんだん)は双葉より芳し」という。大きなことをなす人は幼少期から優れた才能を発揮していた、という意味だ。

 競走馬にも、それはいえる。のちのG1馬の過半数は新馬戦を勝っているだろう。

 だが、ショウナンカンプはそうではなかった。“常識”を覆した馬だった。

 3歳1月の中山ダート1800メートル戦でデビュー。何と勝ち馬から5秒差の11着大敗を喫した。G1を勝つ未来をこの時点で予想できた人はいただろうか。

 初勝利は4戦目。3歳夏の福島。その後はダートの短距離に適性を見いだし、3歳12月の中山で3勝目を挙げた。

 そして4歳の2月、ダート短距離専門馬に転機が訪れる。

 初めて芝に挑戦した。デビュー11戦目。ようやく体に実が入ったと判断した大久保洋吉師の決断だった。

 芝1200メートルの山城S(1600万下=現3勝クラス)でショウナンカンプは後続に2馬身半差をつけ、あっさりと逃げ切った。2着はのちにG1を2勝するビリーヴ。ハイレベルなメンバーだった。

 続く芝1200メートル戦のオーシャンS(当時オープン)も2馬身半差つけて悠々逃げ切り。ショウナンカンプは勇躍、02年高松宮記念へと駒を進めた。

 芝の重賞初挑戦。だが藤田伸二騎手(引退)には自信があった。「この馬はスピードの絶対値が違う。スタートさえ決めれば結果はついてくる」

 ゲートが開く。迷わずハナへ。2F目に楽な手応えのまま10秒2のラップを刻む。2馬身後方で懸命に食らいつくアドマイヤコジーン(2着)、メジロダーリング(14着)とも手綱を動かしながらの追走。ショウナンカンプのスピードは他馬とは全く違っていた。

 直線を向く。手前を替えないが、それでも後続を詰めさせない。追走する馬たちの脚音を聞くことなく、ショウナンカンプは3馬身半差をつけてゴールに飛び込んだ。

 「短距離ではスピードが違う。これからもこの馬でどんどん勝っていきたい」(藤田騎手)

 関係者によれば、藤田騎手は山城Sを勝った時点で国本哲秀オーナーに「この馬で高松宮記念に行かせてほしい」と提案したという。芝のG1でもトップに立てる絶対的なスピードを初の芝挑戦の一戦で、すでに感じ取っていた。

 大久保洋吉師は勝った瞬間、珍しく両手を高々と上げてガッツポーズ。「こみ上げてくるものがあった。常にソエがつきまとった馬。今回はだいぶ治まっていたので、ひそかに期待していたんだ」

 デビュー戦で5秒もの差をつけられた馬が、きっかけを手にして一気にG1馬へと上り詰めた。何だか力の湧く、桶狭間での圧勝劇だった。
(C)スポーツニッポン