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【阪神JF】津村、師匠・鈴木伸師へ届けるミツカネベネラで金星

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ミツカネベネラと鞍上の津村
 水曜企画「G1追Q探Q!」は担当記者が出走馬の陣営に聞きたかった質問をぶつけて本音に迫る。2歳牝馬の頂上決戦「第77回阪神JF」は東京本社の鈴木悠貴(34)が担当。師匠、鈴木伸尋師(66)の管理馬ミツカネベネラと大舞台に臨む津村明秀(39)を徹底取材した。「充実」「完成度」「感謝」の3テーマを問う。

 【充実】津村は競馬学校騎手課程の20期生。川田、藤岡佑、吉田隼、丹内ら豪華な顔ぶれが並ぶ“黄金世代”の一人だ。伸び悩んだ時期もあったが、近年の充実ぶりは目覚ましい。23年は年間自己最多56勝を挙げ、昨年はヴィクトリアマイルをブービー人気テンハッピーローズで制し、G1・48度目の挑戦で悲願初戴冠。「もう勝てないかもしれないと思っていたが、それでも諦めたら駄目だと。どんな時でも何とか乗れるようにと思いながらやってきた。たどり着けて良かった」と涙ながらに喜びを語ったのは記憶に新しい。

 今年は既にキャリアハイとなる重賞4勝(京成杯、新潟2歳S、毎日王冠、福島記念)。先週6日のスポニチ賞ステイヤーズSでも5番人気マイネルカンパーナを2着に導く好エスコートを見せた。レースの流れを冷静に見極め、ウイニングポジションを探り、仕掛けどころを間違えない。デビューからの21年で培った熟練の技が光る“いぶし銀”。2度目のG1制覇へ風は吹いている。

 【完成度】デビューから3戦連続でタッグを組むミツカネベネラの武器は完成度の高さ。新馬戦(新潟芝内回り1400メートル)は道中で馬群にモマれたが、嫌がるそぶりはなかった。直線は鞍上の指示にしっかり反応し鋭伸。2歳馬らしからぬ大人の競馬で初陣を飾った。

 陣営が2戦目に選んだのは、毎年素質馬が集うアルテミスS。雨が降る中での特殊なレースで、道中リズムを崩す馬が多かったが、ベネラはしっかり折り合いがついていた。直線は重い馬場にへこたれることなく、ジリジリと脚を伸ばして2着。昇級、距離延長、初の東京コース。厳しい条件をあっさりクリアした。津村は「何より競馬センスがいい」とパートナーを絶賛。「切れるより長くいい脚を使うタイプ。阪神コースも対応できる」と舞台替わりを不安視していない。前走アルテミスS組は近10年で5勝。データもベネラのVを後押ししている。

 【感謝】津村はデビューした04年から07年まで鈴木伸厩舎に所属。23年朝日杯FSサトミノキラリ6着以来となる2度目のG1師弟タッグに「前走後、先生に“G1に行きましょう”と話していた。2人で挑戦できるのは本当にうれしいことです」と意気込みを語った。

 厩舎所属期間は短い。それでもトレーナーは津村をサポートし続けた。「僕はフリーになるのが早かったけど、ずっと厩舎の馬に乗せてくれたんです」。JRA通算1万2210戦中、厩舎別最多1025戦が鈴木伸厩舎の馬。今年7月12日の福島6R、史上69人目となるJRA通算700勝を達成したのも鈴木伸厩舎のショーリバースだった。「ずっと一緒にやってきた。本当にお世話になっている人なんです」と津村。「いい結果で恩返しをしたい。やってやりますよ!」と力を込めた。馬名の由来は冠名+金星(ロシア語)。感謝の気持ちを胸に、師匠に金星を届ける。

 《取材後記》今年で厩舎開業28年目の鈴木伸師は9度目のG1参戦。一番弟子、津村と挑む大舞台に「やっぱりちょっと気持ちの持ちようが違うね」と気持ちは高ぶっている。G1での馬券絡みは03年オークスのチューニー2着、10年ヴィクトリアマイルのニシノブルームーン3着。現在66歳、勇退まであと4年と迫る中で訪れた、またとない戴冠チャンス。「俺ももう(調教師生活は)長くないから、こういう(津村との)機会があるのはうれしい。なんとか勝ちたいね」と感慨深げに語った。

 「フリーになっても弟子は弟子だから」と津村を支え続けているトレーナー。津村との重賞挑戦は過去14度あるが、最高着順は今年のアルテミスSでのミツカネベネラ2着で、いまだ勝利はない。師弟でのタイトル奪取は、津村がデビューした時からの2人の夢。21年の思いが結実してほしいと心から思った。(鈴木 悠貴)

 ◇津村 明秀(つむら・あきひで)1986年(昭61)1月5日生まれ、千葉県出身の39歳。美浦・鈴木伸厩舎所属で04年3月にデビュー。06年ラジオNIKKEI賞(タマモサポート)で重賞初勝利。JRA通算1万2210戦727勝(重賞22勝)。1メートル68、51キロ。血液型O。
(C)スポーツニッポン