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【天皇賞・秋】鈴木康弘氏 ルメールがマスカレードボールの持久力信じたロングスパート

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<天皇賞(秋)>レースを制したルメール騎乗のマスカレードボール(撮影・河野 光希)
 【鈴木康弘 達眼解説】海の向こうの歴史的快挙からおよそ8時間後、東京競馬場のターフビジョンに映し出されたのは、もう一つの歴史的快挙への序幕でした。直線坂上、無限の可能性を乗せて先頭に躍り出たのは伸び盛りの3歳馬マスカレードボール。日本調教馬初の米BCクラシック優勝を飾ったフォーエバーヤングが祖父ディープインパクトから並外れた心肺を受け継いだのなら、こちらは母の父ディープインパクトから柳のようにしなやかで柔らかい筋肉を引き継いでいる。鞍上・ルメールが3角過ぎから追い続けてもゴールまでバテずに雄大なストライドを伸ばしました。600メートル以上もスピードを持続できるタフな末脚。疲れのたまりづらい柔軟な筋肉を備えている競走馬だけが可能なパフォーマンスです。

 勝負のキーポイントになったのは3角過ぎ。ペースが遅いと感じたのでしょう。ルメールの手綱がためらいもなく動いた。中団の後ろから徐々にポジションを上げていきました。直後を追走していたミュージアムマイルは一緒に動かず後手に回ってしまった。ラスト3F32秒9の上がりの競馬。後ろからではとても届かない。ルメールの判断は正しかった。ロングスパートが利く持久力を備えていると信頼すればこその早仕掛け。今後、距離が延びても十分に克服できる。ディープインパクトの特長を体現する中長距離ホースです。

 しなやかな体には伸びしろがある。古馬になれば馬体に実が入り、さらに進化するでしょう。どこまで強くなるのか。米BCクラシックを制した日本調教馬に残されたビッグタイトルは日本競馬界の悲願、凱旋門賞。来秋には海の向こうから、もう一つの歴史的快挙を届けてくれるようなスターホースになってほしい。(NHK解説者)
(C)スポーツニッポン