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【秋華賞】G1初挑戦ジョスラン 鹿戸師、爆発の予感

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万全を期し栗東で直前調整するジョスラン(撮影・亀井 直樹)
 秋G1の水曜企画は担当記者が出走馬の陣営に聞きたかった質問をぶつけて本音に迫る「G1追Q!探Q!」。牝馬3冠レース最終戦「第30回秋華賞」は東京本社・高木翔平(35)が担当する。厩舎ゆかりの良血馬ジョスランを手がける鹿戸雄一師(63)を直撃。「厩舎の勢い」「厩舎ゆかりの血統」「G1通用の素質」の3テーマを問う。

 【厩舎の勢い】秋G1開幕戦のスプリンターズSは鹿戸師にとって一生忘れられないレースとなった。自身が手がける8歳馬ウインカーネリアンと、厩舎所属の三浦皇成は人馬共にG1初勝利。蹄葉炎(ていようえん)で一時は引退も考えた愛馬と、実に127度目の挑戦で待望のG1タイトルを手にした愛弟子。鹿戸師は「本当にうれしかったし、時間がたってもうれしいですね。厩舎のみんなも凄く喜んでいたし、元々雰囲気はいいけど、さらにいいですよ」と笑顔を見せる。ウインカーネリアンは11番人気での激走。当日の中山競馬場は多くのファンが馬券を外したはずだが、“三浦コール”が湧き上がるほどの祝福ムードに包まれた。師は「何だか不思議な雰囲気でしたよ。それだけ応援してくださる方がいたんだと。ありがたいです。スクリーンヒーローの子で勝てたのも調教師冥利(みょうり)に尽きます」と感慨深げ。鹿戸厩舎にG1初勝利をもたらしたスクリーンヒーロー産駒でのビッグタイトル獲得。これ以上ない好ムードで秋G1・2戦目を迎える。

 【厩舎ゆかりの血統】3歳時に皐月賞、天皇賞・秋、有馬記念とG1を3勝したエフフォーリアを手がけた鹿戸師。ペリファーニア(23年桜花賞3着)など年下のきょうだいたちは全て鹿戸厩舎に入厩しており、全妹ジョスランもその一頭だ。師はポリシーを持ってこの血統に向き合っている。「どうしてもエフフォーリアを意識してしまいそうになるけど、先入観は持たないようにしている。それぞれ性格も馬体も違うし、同じように接してもうまくはいかないから。(1歳下の)ヴァンガーズハート(セン6)なんかは全くタイプが違うのに、エフフォーリアくらい期待されちゃってかわいそうだった」。それでもジョスランには少し似通うところもあるらしく「走ることに一生懸命なところは似ているね。そこに体が強くなってきて続けて使えるようになってきた」と目を細める。デビュー前のエヴィーヴァ(牝2)も含めれば、エフフォーリアの下を既に5頭管理する師。自然体で良血馬たちと向き合っている。

 【G1通用の素質】キャリア4戦3連対のジョスラン。秋華賞切符が懸かった前走紫苑Sは前残りの展開を中団から追い上げて2着。マイペースで逃げ切ったケリフレッドアスクとはわずか首差だった。「前回は折り合い良く伸びてきたし負けはしたがいい競馬でした」と鹿戸師。6キロ増の馬体に加え、夏を越しての精神的な成長を認めた。それでも万全を期して、8日に栗東トレセンへと移動。イレ込み癖を考慮し、京都競馬場への輸送距離が短い関西での調整を選択した。指揮官は「折り合いさえつけば、しまいは爆発してくれると思う。レースは少し流れてくれればいいんだけど。能力的には全然勝負になってもおかしくないとみています」と自信をのぞかせる。出走への賞金ボーダーが高く、例年以上の好メンバーとなった今年の秋華賞。相手が一気に強化されるG1初挑戦だが、陣営は通用のポテンシャルを感じ取っている。

 ◆鹿戸 雄一(しかと・ゆういち)1962年(昭37)5月23日生まれ、北海道出身の63歳。84年3月、騎手デビュー。02年から5年間、藤沢和雄厩舎の調教に加わり、JRA通算5487戦346勝(重賞4勝)で07年引退。調教師に転身して08年3月開業。JRA通算5174戦494勝、同重賞16勝(うちG1・5勝)。血液型A。

 【取材後記】競馬記者となって10年。忘れられない調教風景はいくつかある。21年天皇賞・秋の週の土曜朝、エフフォーリアは今はなき美浦トレセンの北馬場で最終調整。3歳馬ながら先頭で堂々と僚馬たちを引き連れ、朝日に照らされる筋肉質の馬体は神々しくさえあった。既に他の馬に本命を託した後だったが、どうしても“鞍替え”したくなったのを覚えている。当時の話を鹿戸師に振ると「あの時は本当に凄い出来だった。当時、既に厩舎で一番しっかりしていたからね。コントレイルやグランアレグリアを破っての勝利だったし、本当に強かった」と懐かしげだった。思えば、秋華賞に出走する馬たちと同じ3歳秋であの貫禄を出していたのだから驚きだ。ジョスランなどきょうだいたちが追いかける兄の背中は大きい。(高木 翔平)
(C)スポーツニッポン