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【追憶の関屋記念】89年ミスターブランディ これが“逃げの大塚”の真骨頂 14番人気馬が驚きの逃走劇

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伏兵ミスターブランディで89年関屋記念を制し、口取りでポーズを決める大塚栄三郎
 オールドファンに納得してもらえれば、それでいい。関屋記念といえば大塚栄三郎騎手である。50代以上の方、そうですよね?

 89年、14番人気のミスターブランディ、94年は13番人気のマイスーパーマンで関屋記念2勝。夏の新潟といえば大塚騎手が大穴を開けていたイメージだ。

 だが今回、89年関屋記念の資料を調べて驚いた。大塚騎手はこの年が初めての本格的な新潟滞在だったのだ。

 吉野勇厩舎所属時は、夏といえば必ず北海道だった。だが、この年の春からフリーとなり、顔を広げる意味で初めての新潟常駐を選択。そこでいきなりチャンスをものにした。

 この年の関屋記念は18頭立て。人気は3歳時(表記は現在に合わせる)にスプリングSを制したマティリアルと、この年の新潟で連勝を決めていた上がり馬チョウカイフリートだった。

 逃げる形が理想のミスターブランディにとってポイントは増沢末夫騎手の出方だった。相棒の3歳馬ダイワゲーリック(5番人気)は前走のラジオたんぱ賞を2番手から抜け出して快勝。先手を取れるスピードはここでも通用すると思われた。

 ミスターブランディへの騎乗は2年ぶりだった大塚騎手。前日追いにまたがり、2年前とは馬の状態が全く違っていたことに驚いた。「これなら勝負になる。行くだけ行こう」と決めた。

 ゲートが開いた。大外8枠18番からでも初速の違いでハナに立つダイワゲーリック。だが、そこを大塚騎手がミスターブランディを気合十分に押しまくり、半ば強引にハナを奪った。気性面で不安の残る増沢騎手は折り合いに専念し、2番手に控えた。

 そこからが大塚騎手の腕の見せどころだった。徐々にラップを落とし、3ハロン通過は34秒7。直線を向いても手応えは十分。直線半ばでダイワゲーリックにかなり迫られたが、これを振り切ると、4角14番手から鋭い脚を使ったマティリアルを首差しのぎきった。

 「最大の勝因は増沢騎手の馬が2番手に控えてくれたことですよ」。大塚騎手は、してやったりの表情だった。有力馬のマークはダイワゲーリックに集まる。その隙を突いて逃げ込みを図るという大塚騎手の作戦が見事にハマった。

 「新潟に来て良かったよ。たまにはいいこともなくちゃ」。この時7歳だったミスターブランディ。大塚騎手の手綱で息を吹き返した老雄(失礼!)は、秋には2度目の福島記念勝ちを決め、生涯2度目の有馬記念参戦(15着)も果たすのである。
(C)スポーツニッポン