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【追憶の七夕賞】06年メイショウカイドウ 「小倉の鬼」がみちのくで躍動 福島競馬場が人であふれた

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逃げ込みを図るコンゴウリキシオー(右)を直線半ばでかわして優勝したメイショウカイドウ(4)。鞍上・武豊も笑顔
 「メイショウカイドウ」を検索すると恐らく上位に「小倉の鬼」「小倉3冠」といったワードが上位に来るものと思われる。

 小倉記念、小倉大賞典、北九州記念を制した、まさにミスター小倉。だが、そんな小倉の顔が福島競馬場で躍動したことがあるのだ。それがこの七夕賞である。

 05年に史上初となる「同一年小倉3冠」を達成。06年も同じ道を行くかと思ったが、メイショウカイドウが向かったのは遠きみちのくの地だった。何と、この年から北九州記念が芝1200メートル戦となり、連覇の夢が実質的に閉ざされたのだった。

 しかし、坂口正大師は愚痴を口にせず、七夕賞に向けてメイショウカイドウを黙々と仕上げた。2月の佐賀記念(5着)以来の久々だったが、長距離輸送を考慮しつつ、マイナス3キロの仕上げ。前年、小倉3冠の手綱を取った武豊騎手も「メイショウカイドウが行くなら福島へ行きますよ」と騎乗依頼を快諾した。

 06年7月9日の朝、福島駅前の競馬場行きバス乗り場には人の列ができていた。武豊騎手、7年ぶりの福島参戦。競馬場は対前年比112.7%、2万3000人と人であふれた。

 2枠4番から互角のスタートを切る。武豊騎手は心持ち、メイショウカイドウを外に誘導しながら先団をうかがった。開催最終日でインはかなり荒れた状態。久々の参戦でも馬場読みは的確だった。

 3番手で流れに乗る。3コーナーで早々とムチが入った。トップハンデ59キロ。初めての福島。これは苦しいかと思われたが、そんなことはなかった。ムチが入るたびにメイショウカイドウのギアは上がっていった。

 残り150メートル。逃げたコンゴウリキシオーを捉えて先頭に立つ。「メイショウカイドウ武豊、メイショウカイドウ武豊ゴールイン!」。ゴール前で騎手の名を2度も呼ぶ珍しい実況に後押しされ、メイショウカイドウが七夕賞制覇。武豊騎手の右腕が軽く上がった。九州の覇者は福島でも凱歌を上げた。

 そこからが、また大サービス。メイショウカイドウと武豊騎手はウイニングランを行い、みちのくのファンの拍手を浴びた。

 「久しぶりだし、せっかくなので(ウイニングランを)やっちゃいました。朝から大勢のお客さんが入っているな、と思っていましたからね。しかし、福島って、こんなに人口が多かったんですね」。ジョークもさえた武豊騎手。何度もスタンドに向かって手を振った。

 59キロを背負いながらしっかりと抜け出したメイショウカイドウも大したものだ。「立派ですよね。よく似たコース形態で馬も小倉だと思って走っていたのかな」。報道陣を再度、笑わせた武豊騎手。地元福島のメディアが「福島にも、もっと来て下さいよ」と振ると「チャンスがあれば来たいね」と答えた。

 「声援がうれしいねえ」。坂口正大師も笑顔だ。「次走は小倉記念です。福島でも多くの方に応援してもらったけど、小倉で待つファンも多いからね」。メイショウカイドウが福島で走ったのは、この1度きりだったが、多くのファンの心を奪った遠征となった。
(C)スポーツニッポン