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春のG1シリーズの水曜企画は「G1 追Q!探Q!」。担当記者が出走馬の陣営に「聞きたかった」質問をぶつけて本音に迫る。春の牝馬頂上決戦「第20回ヴィクトリアマイル」は東京本社・後藤光志(29)が担当。G1初挑戦Vを目指すアドマイヤマツリを管理する宮田敬介師(44)を取り上げる。「初挑戦」「ターニングポイント」「成長一途」の3テーマを聞いた。
アドマイヤマツリはメンバー随一の上昇株。前走福島牝馬Sで重賞初挑戦V。8戦連続連対中と勢いはとどまるところを知らない。今回は初マイル、初G1と“初めての壁”突破への大きな挑戦。宮田師は「トップマイラーや、距離が短いところでも勝っている馬もいますから。そのスピードについていけるか、G1でどこまでやれるかチャレンジかなという部分はあります」と率直な思いを話す。
一方で、東京コースは【3・2・0・0】、連対率100%と相性抜群。愛馬の“可能性”に期待せずにはいられない。「レースの流れに応じてポジションを決められるのが大きな強み。(鞍上の)田辺ジョッキーにも“取りたい位置を取りにいってすぐに冷静になれるから乗りやすい。どこからでも競馬ができると思います”と言ってもらえたのは心強いです」と力を込める。
昨年6月の初勝利から、わずか11カ月で大舞台まで駆け上がってきた。命運を分けたのは、その1勝目を飾った未勝利戦。地力が問われる東京1800メートルで好位から力強く伸び、追い比べを制した。「今思えば七分くらいの出来でしたが、鼻差で勝ち切ってくれた。夏は3カ月ほど北海道に放牧へ出して、成長を促す期間をつくれたのが非常に大きなターニングポイントだった。それが昨秋以降の躍進につながっているのでは」とうなずく。
4カ月の休養明けとなった秋始動戦は未勝利戦と同じ東京9F。今度は中団から上がり最速3F33秒1の剛脚で差し切った。「こんな凄い勝ち方ができる馬だったんだなと。正直、未勝利を勝った時は、1勝クラスでもまだ厳しいかなという思いがあった。それで成長を促すため放牧へ。夏以降は強い相手に想像を超える勝ち方をしている」。ひと夏を越えての成長力、非凡な能力を目の当たりにして、改めてポテンシャルの高さを実感した。
前走後は在厩で調整。心身とも着実にパワーアップしている。指揮官は「福島牝馬Sの時から中3週で続戦になりますが、前走時からカイ食いが別馬みたいに食べ出して体の戻りが非常に良かった。馬がオンとオフをつくれるようになって回復も早くなった」と好調の要因を分析。「以前はキ甲が低くて幼い走りをしていた。それが前走、競馬場で装鞍(そうあん)した時に、どんどんキ甲が高くなっているなと感じた。それが走りの質の向上につながっているのかな。時間に応じて馬体も成長している」とフィジカル面の状態にも手応えをつかんでいる。
「未勝利を勝った時には1年後、G1までたどり着いているとはイメージできなかった」。陣営が思い描く成長曲線を上回るスピードでたくましくなっているアドマイヤマツリ。「さらに上の舞台に行けるのは楽しみ」と師も期待感を隠さない。力を出し切った先には大団円のフィナーレが待っている。
◇宮田 敬介(みやた・けいすけ)1980年(昭55)10月8日生まれ、茨城県出身の44歳。ノーザンファーム勤務を経て、05年JRA競馬学校厩務員課程に入学。06年から栗田博、田島俊、国枝厩舎で研さんを積む。20年3月に美浦トレセンで厩舎開業。21年、ダンシングプリンスでカペラSを制して重賞初制覇。
【取材後記】
牝馬らしいスラッとした美しい顔立ちのアドマイヤマツリ。スタッフからは「マツリ」の呼び名でかわいがられている。宮田師にとっては、そんな周囲の人の笑顔が原動力になっている。「福島牝馬Sを勝った後、(生産牧場の)スマイルファームに電話をしました。牧場の方も小さい時から愛情を注いでくださった馬だと十分伝わってきましたし、本当に喜んでくれた」
取材中も終始、師が話す言葉には感謝の思いが込められていた。「結果が出て、皆が喜んでくれているというのが一番うれしくて調教師をやっている。スタッフも含めてですけど、その瞬間のためですよね。この先もそういう瞬間を少しでも増やしていきたい」。23年、エリザベス女王杯をブレイディヴェーグで制してG1初制覇。同年から3年連続で重賞Vと、着実に実績を積み上げているゆえんが師の人柄から伝わってきた。 (後藤 光志)
アドマイヤマツリはメンバー随一の上昇株。前走福島牝馬Sで重賞初挑戦V。8戦連続連対中と勢いはとどまるところを知らない。今回は初マイル、初G1と“初めての壁”突破への大きな挑戦。宮田師は「トップマイラーや、距離が短いところでも勝っている馬もいますから。そのスピードについていけるか、G1でどこまでやれるかチャレンジかなという部分はあります」と率直な思いを話す。
一方で、東京コースは【3・2・0・0】、連対率100%と相性抜群。愛馬の“可能性”に期待せずにはいられない。「レースの流れに応じてポジションを決められるのが大きな強み。(鞍上の)田辺ジョッキーにも“取りたい位置を取りにいってすぐに冷静になれるから乗りやすい。どこからでも競馬ができると思います”と言ってもらえたのは心強いです」と力を込める。
昨年6月の初勝利から、わずか11カ月で大舞台まで駆け上がってきた。命運を分けたのは、その1勝目を飾った未勝利戦。地力が問われる東京1800メートルで好位から力強く伸び、追い比べを制した。「今思えば七分くらいの出来でしたが、鼻差で勝ち切ってくれた。夏は3カ月ほど北海道に放牧へ出して、成長を促す期間をつくれたのが非常に大きなターニングポイントだった。それが昨秋以降の躍進につながっているのでは」とうなずく。
4カ月の休養明けとなった秋始動戦は未勝利戦と同じ東京9F。今度は中団から上がり最速3F33秒1の剛脚で差し切った。「こんな凄い勝ち方ができる馬だったんだなと。正直、未勝利を勝った時は、1勝クラスでもまだ厳しいかなという思いがあった。それで成長を促すため放牧へ。夏以降は強い相手に想像を超える勝ち方をしている」。ひと夏を越えての成長力、非凡な能力を目の当たりにして、改めてポテンシャルの高さを実感した。
前走後は在厩で調整。心身とも着実にパワーアップしている。指揮官は「福島牝馬Sの時から中3週で続戦になりますが、前走時からカイ食いが別馬みたいに食べ出して体の戻りが非常に良かった。馬がオンとオフをつくれるようになって回復も早くなった」と好調の要因を分析。「以前はキ甲が低くて幼い走りをしていた。それが前走、競馬場で装鞍(そうあん)した時に、どんどんキ甲が高くなっているなと感じた。それが走りの質の向上につながっているのかな。時間に応じて馬体も成長している」とフィジカル面の状態にも手応えをつかんでいる。
「未勝利を勝った時には1年後、G1までたどり着いているとはイメージできなかった」。陣営が思い描く成長曲線を上回るスピードでたくましくなっているアドマイヤマツリ。「さらに上の舞台に行けるのは楽しみ」と師も期待感を隠さない。力を出し切った先には大団円のフィナーレが待っている。
◇宮田 敬介(みやた・けいすけ)1980年(昭55)10月8日生まれ、茨城県出身の44歳。ノーザンファーム勤務を経て、05年JRA競馬学校厩務員課程に入学。06年から栗田博、田島俊、国枝厩舎で研さんを積む。20年3月に美浦トレセンで厩舎開業。21年、ダンシングプリンスでカペラSを制して重賞初制覇。
【取材後記】
牝馬らしいスラッとした美しい顔立ちのアドマイヤマツリ。スタッフからは「マツリ」の呼び名でかわいがられている。宮田師にとっては、そんな周囲の人の笑顔が原動力になっている。「福島牝馬Sを勝った後、(生産牧場の)スマイルファームに電話をしました。牧場の方も小さい時から愛情を注いでくださった馬だと十分伝わってきましたし、本当に喜んでくれた」
取材中も終始、師が話す言葉には感謝の思いが込められていた。「結果が出て、皆が喜んでくれているというのが一番うれしくて調教師をやっている。スタッフも含めてですけど、その瞬間のためですよね。この先もそういう瞬間を少しでも増やしていきたい」。23年、エリザベス女王杯をブレイディヴェーグで制してG1初制覇。同年から3年連続で重賞Vと、着実に実績を積み上げているゆえんが師の人柄から伝わってきた。 (後藤 光志)
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